更新日: 2025年03月13日

PeerCrossユーザーインタビュー♯6:ワーキングマザー支援は、制度だけではダメ!? 大事なのは社外の“ちょっとした先輩”の存在

JR東日本グループの新事業創造プログラム「ON1000」から生まれたワーキングマザー向けキャリア形成支援サービス、PeerCross。スタートから1年半ほどがたち、ユーザーの皆様の前向きなキャリア形成の後押しとなっています。
人事・戦略コンサルタントの松本さんから見た、現在のPeerCrossの状況を、お伺いしました。

「社外を知らずして、これからの女性活躍は語れない」

人事・戦略コンサルタントとして、20年以上600社以上のHR戦略を支援してきた松本利明さんは、長年の経験から、「社外」というフィールドが女性の成長を加速させると言います。数々の女性のキャリアに触れてきた松本さんが語る、「社外」の可能性とは何でしょうか。社外のロールモデルやロールパーツとの出会いを通じ、ワーキングマザーのキャリア支援を行う「PeerCross(ピアクロス)」起案者・小西との対談を通じて、これからの女性活躍推進のヒントを探ります。

PeerCrossとは

PeerCrossとは、JR東日本グループの新事業創造プログラム「ON1000」から生まれたワーキングマザー向けキャリア形成支援サービスです。大手企業のワーキングマザー同士が、価値観・境遇の近しい方と出会うことができ、主にマッチングと座談会サービスをを提供しています。
PeerCrossHP画像 出典:PeerCross説明
ワーキングマザー向けキャリア形成支援サービスPeerCross(ピアクロス)

制度は充実しても、社内にロールモデルがいない問題 社外は豊富なモデルケースに溢れている

ーー松本さんは20年以上、人事改革や人材開発に携わってこられたということですが、そうした中で、「PeerCross」の活動を応援されていると伺いました。

松本:そうですね。10年以上前から女性活躍推進にも関わるようになり、ワーキングマザーの方にキャリアのワークショップや個別アドバイスをするようなことも、ライフワークとして取り組んできました。そうした中で、女性が社外にロールモデルを探すことが非常に重要だと考えていますので、「PeerCross」のような取り組みは素晴らしいと思いますね。

小西:ありがとうございます。さまざまな人事戦略に関わってこられた松本さんにそう言っていただけるのは、とても心強いです。
松本さん写真
画像提供:松本さんより
■松本利明さん Profile
外資系大手コンサルティング会社を経て、HRストラテジーを設立。国内外の大企業から中堅企業まで600社以上の働き方と人事の改革に従事。企業向けのコンサルティングに加え、「誰もが、自分らしく、活躍できる世の中」に近づけるため、自分の持ち味を活かしたキャリアの組み立て方を学生、ワーママ、若手からベテランのビジネスパーソンに教え、個別のアドバイスを5000名以上、ライフワークとして提供している。『「いつでも転職できる」を武器にする』(KADOKAWA)など、ベストセラー多数。英国BBC、TBS、日本経済新聞、AERA、新R25等メディア実績多数
小西写真
画像提供:小西
■小西好美 Profile
2009年JR東日本入社。駅や運転士など鉄道現場を経験後、支社にて人事(採用・ダイバーシティ推進)、本社にてSuica事業を担当。第一子の育休後、仕事と育児の両立に悩んだ自身の経験をもとに、2019年度にJR東日本グループの新事業創造プログラム、ON1000に応募。実証実験を経て、事業化審査後、事業創造本部(現マーケティング本部)へ異動。第二子の出産を経て、2023年7月~大手企業向けワーキングマザー向けキャリア形成支援サービス、PeerCrossをスタート。現在30社を超える企業様にご導入いただいている。



松本:女性活躍推進においては、さまざまな研修が行われていますが、何かを学んだからといってすぐに実現できるような簡単なものではありません。やはり、目指すべきロールモデルを探すことが大事なのですが、いくら社内で探そうとしても、女性の管理職やリーダーの数も少なければ、世代によって働き方の価値観も違います。ひとつの会社の中に、豊富なモデルがないのが現状です。

ーー外に行けば、豊富なロールモデル・ロールパーツに出会えると。

松本:そうですね。男性は「あの人を目指そう」というように、ひとりのロールモデルをケースとする場合が多いですが、女性はたくさんの“推し”がいて、ロールモデルがひとりとは限らなかったりする。だからロールパーツが必要なのですが。

また、すごいキャリアを持つ人より、いろいろ教えてくれるような身近な存在を求める傾向があります。なので、社外のコミュニティに入るなどネットワークを広げて、“ちょっとした先輩”に相談したり学んだりできるような中で、モデルを見つけていくのが実は結構喜ばれるのです。

「PeerCross」は、小西さんを始め、ワーキングマザーである当事者の方々が運営されていますし、大企業の中で立ち上げているということにも、すごく価値があると思います。大企業で働く方は数も多いので、社会的インパクトも大きい。
松本さん写真
HRストラテジー 松本さん
小西:ありがとうございます。多くの大企業は、時短制度やフレックス、テレワークなど、ワーキングマザーが働き続けられる環境は整ってきているように思います。
一方で、制度はあっても、松本さんがおっしゃるように、どうキャリアを重ねていくのか、リーダーになるとか管理職を目指すといったモデルケースが足りていないと感じます。

「PeerCross」には、さまざまキャリアやバックグラウンドを持ったワーキングマザーがいます。管理職であっても一般職であっても、子どもが3人いてもひとりでも、みんなが give and take の精神で関係を築ける。背中を押してもらうときもあれば、押すときもある。そうした「ピア(対等)」な関係を大事にしています。
小西
PeerCross起案者小西
松本:いいですね。制度だけがぶくぶく太っても成功はしませんから。組織側はダイエットが必要かもしれない(笑)。D&I(ダイバーシティ&インクルージョン)は、女性活躍推進の制度や仕組みをたくさん作ることが本質ではありません。「多様性は認めるのではなくて、最初から当たり前に存在していて、パフォーマンス(成果・効率)をあげる共通のプロセスやルールをみんなで守る」と考えることが大切です。

ワーキングマザーだけではなく、制約のある女性もオジサンや新入社員の男性の方でも活躍できるような状態を実現するのがインクリュージョンの本質です。

60%以上のワーキングマザーが管理職に前向き ポジティブな面を知ることが大事

ーー女性の管理職やリーダーが少ないという話がありましたが、そもそも「なりたい」という女性自体が少ないのでしょうか。

松本:男性女性に関わらず「若い人がなりたがらない」という話をよく聞きますが、「魅力がないところしか見えていないからですよ」と話しています。要は、管理職との接触の中では大変な面しか見えにくいもの。管理職になることでどのような武器が手に入るか。やりがいや達成感、成長感がどれほど爆上がりするのか。キャリアの選択肢がどのように広がるのかなどといった、プラスの部分を見せることが重要です。

あなたは和食派ですか、中華派ですか。みたいに、「スペシャリストコースを目指しますか、それともマネジメントコースですか」というような示し方をしただけではダメで、キャリアには仕事を通したドラマが大事。本当にみんながやりたいと思えるような魅力的なデザインをしてあげることが大切です。

また、仮に管理職になりたいと思っても、「年功序列を考えたら自分よりも先輩たちがいるな」とか、「しばらくは可能性ないな」などと思った瞬間に、考えるのをやめちゃいますよね。なので、キャリアをタテに伸ばしていくだけじゃなくて、ヨコに広げていくような仕掛けも必要でしょう。
松本さん②
小西:ちなみに「PeerCross」ユーザーで言うと、約64%の方は管理職になることを前向きに捉えているんです。実はうちに秘めた思いを持っている方が多い印象です。

松本:ビックリ!それはすごくいい傾向ですね。

小西:なので、こうした思いを上司や管理職の方々がちゃんと引き出してほしいなと。また、本人にも、「前向きであることをちゃんと伝えていこう」と話しています。
この間、某メーカーに務める管理職の方が「(自社には)数も少ないし、みんななりたがらないし。そもそもなれないと思っている」という話をしてくれました。一方、彼女自身は、管理職であることをすごく前向きに捉えていて。実際に、「管理職になったことで、みんなの力を借りていろんなことができるようになった」、「動きやすくなって、自分でタイムマネジメントが柔軟にできるようになった」といったメリットがあるということでした。

こういうことは、実際に聞いてみないとわからないですよね。これまでネガティブにとらえていた人も、そういうケースもあるんだというポジティブな面を知って、「自分で蓋をしていただけかもしれない。やってみよう」と前向きになっていく。このように、背中の押し合いができるのが「PeerCross」の価値なのかなって、改めて思います。
小西②

いろんなタイプの女性リーダーが生まれている ワーキングマザーが経営に参画する必要性

ーーこれまでのお話を伺い、さまざまなケースを知って、キャリアを前向きにとらえることが何よりも大事だと思いました。「PeerCross」には本当にたくさんのロールモデル・モデルパーツがいらっしゃるので、ポジティブな変化が多くありそうですね。

小西:みなさん、根底には「このままでいいんだろうか」とか、直近でお子さんが生まれたばかりだと「この大変な状態が一生続くのだろうか」と思って、キャリアを諦めてしまったり、不安な方も多いと思います。

でも、自分のちょっと先をゆく先輩に出会うことによって、「5年経ったらこれくらい楽になるんだ」とか、「10年経つと実は単身赴任もできちゃうんだ」とか、少し先の未来に希望を持つことができます。そうなると、いずれは上位職や管理職を目指してみようかなと考える人も増えるのではないかと思います。
価値観を聞くと、仕事優先のバリキャリだという人ってほぼいません。「家庭も仕事もどっちも頑張りたい。だからこそモヤモヤしている」という層の方が多いですね。

松本:これまで20年以上、社会で活躍している女性のリーダーに触れてきましたが、95%以上の方は「出世したい」とか「将来は社長になりたい」とか、元からバリキャリだった人はいないですね。上司やメンバーに恵まれ、仕事が楽しくて、気づいたらバトンを渡されてしまったケースが大半。なので、管理職というと身構える人が多いかもしれないですが、あくまで今の延長線上にあるものととらえると良いかもしれません。

それに、「管理職になったからには、自分もすごくならなきゃいけない」と考えがちですけど、これからのリーダーは、すごい人じゃなくていいんです。周りに応援されながら「この人と一緒に頑張ろう」「あの人についていきたい」と、助け合えるような人が新しいリーダー層だと企業サイドも考え方が変化してきています。
松本さん③
小西:「Peer Cross」の中でも、牽引型のリーダーじゃなくて、「この人を応援したい」「一緒に働きたい」と思われるようなタイプの女性リーダーも多くいます。「いろんなリーダーがいるんだよ」ということを、もっともっと伝えていけたらいいなと改めて感じました。

ーー女性リーダーのパターンが増えると、目指してみようと思う人も増えそうですね。「Peer Cross」のような活動を通じて、ワーキングマザーが前向きに働けるようになることで、組織全体にはどんな良いことがあると考えますか。

小西:実は、私の所属する社内新規事業プログラムの事務局は、多様なバックグラウンドを持っている人材が集まっていて。多様な視点があるからこそ、イノベーションが生まれるのだと感じています。一部の同質性の高いメンバーだけで議論したら、将来の新規事業になるようなアイデアも抜け落ちる可能性があります。
そういう意味でも、ワーキングマザーの視点は、これからの経営に必要な要素だと考えています。
小西③
松本:おっしゃるように、一部の価値観だけで何かを決めるのは間違い。特に日本人は、“みんな”という考え方が大切なので、女性やワーキングマザーに限らず、みんなが活躍できるという視点でデザインすることで、組織全体が良くなるという好循環が生まれるようになります。

小西:そうですよね。「PeerCross」のユーザーさんの中から、経営ボードメンバーになっていくような方々がどんどん増えていくと嬉しいです。松本さん、今日はありがとうございました!


※掲載の内容は2025年1月現在の情報です。

協力:松本利明様
インタビュー・文:小林こず恵
提供:東日本旅客鉄道株式会社
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